CSR
はじめに
当社は1705(寶永2)年、現在の大阪府阪南市尾崎町において創業しました。宮大工であった業祖・初代錢高林右衛門の時代以来、江戸、明治、大正、昭和、平成、そして令和と総合建設企業として歩みを続けてまいりました。これもひとえに信用・信頼をお寄せいただいてきたお客様をはじめとする社会の皆様からのお力添えの賜物と存じます。
この長い歴史の中で受け継がれてきたものが、社是である「信用第一、堅実経営、積極的精神、和親協同」であり、「社会から認められ社会から求められる企業として永遠に発展する」を経営理念のひとつとして掲げ、お客様とお約束した期間内に無事故・無災害で、お客様にご満足いただける品質の建物や構造物等をお引渡しすることを最優先に考え、事業に邁進してまいりました。お客様をはじめとする社会の皆様からの信用・信頼に確実にお応えしていくことは変わらないこと、また変えてはならないことであります。
一方で、昨今の急激な時代変化の中で、その変化に対応するために当社も変化しながら事業に取り組んでいます。そうした時代の変化に柔軟に対応していくことで、企業価値を向上させ、お客様、ひいては社会に対して価値を提供してまいります。
第13次中期経営計画
2025年の創業320周年に向けて
事業環境の急激な変化に対応するために、2023年度から2か年計画としてスタートした「第13次中期経営計画」は2024年度に最終年度を迎えています。
創業320周年を迎える2025年度に向けて、計画を遂行するべく取り組みを加速させています。事業基盤を一層強固に整備するため、従来以上に人材育成や技術開発への投資を強化しています。
「第13次中期経営計画」は以下の4つの施策の大項目を定めています。
- 業績目標達成策
- 【持続可能性】「組織と人員×人材」の強化を図り成長路線を築く
- 【持続可能性】「強い作業所」をつくりあげ、お客様から高い信頼を得る
- 【持続可能性】環境配慮を通じた社会価値提供によりCSRを果たす
中期経営計画の目的は、錢高組がしっかりと社会から評価され、お客様から「錢高組に任せたい」と思っていただけるような会社になること、また豊かな社会環境の実現に向け貢献し、それによって企業価値の向上を実現することにあります。継続して投資し、次の時代・次の次の時代のお客様のニーズに応えられるように、継続してお客様のニーズに応えられる会社になっていくことが、私たち錢高組の目的であると考えています。安定的に利益を稼ぐための投資を積極的に行っています。
株主の皆様へ
当社の企業価値向上に対する考え方
企業価値向上とは「良いお客様を持って良い社員とともに強い財務体力を作っていく」ことであると考えます。そのためには従業員への教育をはじめとした人材への投資で人的資本の質の向上を図り、高品質な建設物をお渡しすることが不可欠です。お客様へ貢献することが社会への貢献となり、さらにそれが「持続可能な社会基盤の整備」にしっかりと貢献していくことで、株主の皆様から今まで以上にご評価を頂けるよう一層事業に邁進してまいります。
お客様へ
お客様が求める品質の確保とお客様ニーズの更なる先取りのために
建設業は契約の時点ではいまだ形のない建設物の完成をお客様にお約束する事業です。それはひとえに、お客様が当社に寄せていただく無形の信用・信頼があってこそ成立するものであると思いを新たにしています。
しかしながら大変憂慮するべきことに、大手ゼネコンをはじめとした様々な現場において多くの品質問題が発生しており、建設業全体に対する信頼が揺らいでいます。当社は品質向上に向けて、過去の成果に満足することなく、さらなるお客様満足のため、技術開発や施工における取り組みを続けています。本報告書ではそのひとつとして、コンクリート構造物の品質確保に重要なコンクリート打設時の締固め作業に関する技術開発についてご紹介しています(➡「品質向上に寄与する技術開発
MRによるコンクリート締固め管理システム」)。
事業環境の急速な変化に伴い、お客様ニーズは多様化しています。具現化していない潜在的なニーズも含めてお客様の課題に先回りし、その解決のために様々なご提案ができるよう、技術力・提案力の向上に取り組んでいます。2022年にZEBプランナー認証を取得してZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)実現に向けた業務支援(建築設計、設備設計、設計施工、省エネ設計)を行っており、改修工事やマンション工事でもZEB・ZEH-Mの実績を積み重ねています。(➡「ZEBの実績拡大に向けた取り組み」)
お客様とのご縁は当社にとって無形の財産です。過去の先輩方が築き上げてきた信用・信頼を次世代に引き継ぎ、これからもお客様に錢高組の仕事にご満足いただき、さらに未来の仕事へのご満足もお約束できるよう精進してまいります。引き続きお引き立てを賜りますようお願い申し上げます。
地域の皆様・学生の皆様へ
建設業の魅力向上と地域の皆様の更なるご理解のために
建設業は、その事業内容そのものが社会貢献活動といえる側面を持っています。社会基盤の構築や防災、災害発生時の復旧活動・復興事業、地域の雇用の創出など建設業は社会の中で大きな役割を担っています。本報告書においては、インフラ事業として当社が関係している各地の新幹線事業、高速道路の耐震補強事業をご紹介しています。(➡「未来と今のインフラを支える錢高組の取り組み」)
新規就労者の減少と高齢化の進展による担い手不足は全産業で共通した課題ですが、建設業においては特に顕著な課題となっています。この課題解決のため、当社においても建設業の魅力向上に向けた取り組みを積極的に進めています。健康経営優良法人を取得して従業員の健康を向上させる、業務効率化による長時間労働の削減や4週8休の実現に向けた取り組みなどで、建設業の魅力向上を図ってまいります。
また地域の皆様や学生の皆様を対象に建設業に対する理解を深めていただくため、現場見学会や企業訪問学習の受け入れ等の教育活動を継続的に行っています。(➡「地域社会の一員として」)お手に取っていただいた皆様にとって、本報告書が建設業に対する理解を深めていただくきっかけになれば幸甚です。
協力会社の皆様へ
元請としての使命と共存共栄関係の構築、CCUSの普及推進
建設現場における安全確保は元請企業のもっとも重要な任務のひとつです。錢高組の作業所で働く全ての方の命を守る責任を胸に「錢高組の作業所ならば、安全に関して心配はない」と言っていただける作業所の構築に努めています。安全に関する各種社内ルールの随時見直し、作業所における安全設備の充実、役職員による定期・不定期の安全パトロールの実施等を通して、全ての作業所で安全な労働環境の構築に向けた不断の努力を続けています。
2023年度については、労働災害の発生頻度を表す度数率および災害の重篤度を表す強度率は前年度より悪化し、依然として労働災害被災者ゼロの目標達成には至っていません(➡「安全で安心な職場づくりを目指して」)。引き続き、労働災害の撲滅に向けた取り組みを継続してまいります。
働き方改革への取り組みも重要なテーマのひとつです。2024年4月から建設業における時間外労働の上限規制が適用されており、改定した業務手順の運用確認・導入したアウトソーシングの効果測定等による生産性向上など業務効率化に向けた各種取り組みの評価を行っています。
また建設業に従事する皆様の処遇改善に向け、建設キャリアアップシステム(CCUS)に登録している方に無料で飲料を提供するCCUS応援自販機を導入するなど、CCUSの普及に引き続き力を入れて取り組んでまいります。協力会社の皆様のさらなるご理解・ご協力をお願い申し上げます。
今後、ゼネコンにとっては協力会社の皆様といかに連携していくのかが、生き残りを左右するようになると認識しています。協力会社の皆様と元請は共存共栄の関係です。今後も引き続き協力会社の皆様のご協力を賜りたく存じます。
環境対応について
脱炭素目標の実現に向けて
社会的な要請がますます高まっている気候変動をはじめとする環境問題への対応として、2030年度に施工段階におけるCO2排出量の40%削減、さらに2050年度にCO2排出実質ゼロの達成を目標に掲げ、脱炭素化の実現に向けた具体的な取り組みを進めています。本報告書においては「環境への配慮」の章で、「脱炭素」の目標達成に向けた進捗状況や工事で使用する電力への「CO2フリー電力」の導入、電動・ハイブリッド重機と軽油代替燃料の活用など、環境問題に対する取り組み状況をご紹介しています。
当社は脱炭素化の推進、そして建設物の省エネ技術の開発・ブラッシュアップを柱に、企業の社会的責任を果たすべく、環境問題に対する具体的な取り組みを強化してまいります。
最後に
時間外労働の上限規制の適用、建設業法の改正など、建設業を取り巻く環境は大きく変化しています。また急速に発展した「生成AI」関連技術を業務に活用するべく仕事の進め方も大きく変化しています。
時間や人員が限られる中で事業を進めていくためには最終的な目標を明確に定め、そこに至る過程を詳細まで計画して取り組まなくてはなりません。
変化の激しい時代の中で市場競争も厳しいなか、我々錢高組自身が変化し続けなければこの先も生き残っていくことはできません。変えるべきものは変え、取り入れるべきものは取り入れていくことを常に心がけ、錢高組の新たな歴史をつくっていくため、事業に一層専念してまいります。今般取りまとめました『CSR報告書2024』をご高覧いただき、忌憚のないご意見を賜れば幸いです。