CSR
はじめに
当社は1705(寶永2)年、現在の大阪府阪南市尾崎町において創業しました。宮大工であった創業者・初代錢高林右衛門の時代以来、当社は総合建設企業として今日まで318年余りの歴史を歩んでまいりました。これもひとえに当社に信用・信頼をお寄せいただいてきた、お客様をはじめとする社会の皆様からのお力添えの賜物と存じます。
当社は大きな時代の変化の中にあっても「信用第一、堅実経営、積極的精神、和親協同」の社是を掲げ、お客様にご満足いただける品質の建物や構造物等を、お約束した期間内に無事故・無災害でお引渡しすることを最優先に考え、事業に邁進してまいりました。しかしながら2022年度には当社元社員の関係するコンプライアンス違反行為が明らかとなり、株主様やお客様をはじめとするご関係の皆様に多大なご心配、ご迷惑をおかけすることとなりました。あらためて深くお詫び申し上げます。当社はかかる事態を厳粛に受け止め、再発防止とより一層のコンプライアンス徹底に向け、各種行動規範をはじめとする社内ルールや業務手順の見直し、組織体制の再構築等を進めております。
一方で大きな時代の変化の中にあっても、変わらないこと、また変えてはならないこと。それはお客様をはじめとする社会の皆様からの信用・信頼に確実にお応えしていくことであり、それによって当社の企業価値を向上させ、お客様、ひいては社会に対して価値を提供してまいります。
第13次中期経営計画
いつの時代もお客様のニーズに応えられる企業であるために
2023年4月に新たな中期経営計画である「第13次中期経営計画」を策定しました。
「第13次中期経営計画」は事業環境の急速な変化に柔軟に対応するため、従前の3年計画を改め2年計画としています。2025年3月までの2年間の取組みで、当社の事業基盤を一層強固に整備することを掲げており、そのために従来以上に人材育成や技術開発への投資を強化していく計画です。
「第13次中期経営計画」は以下の4つの施策の大項目を定めています。
- 業績目標達成策
- 【持続可能性】「組織と人員×人材」の強化を図り成長路線を築く
- 【持続可能性】「強い作業所」をつくりあげ、お客様から高い信頼を得る
- 【持続可能性】環境配慮を通じた社会価値提供によりCSRを果たす
中期経営計画の目的は、錢高組がしっかりと社会から評価され、お客様から「錢高組に任せたい」と思っていただけるような会社になること、また豊かな社会環境の実現に向け貢献し、それによって企業価値の向上を実現することにあります。継続して投資し、次の時代・次の次の時代のお客様のニーズに応えられるように、継続してお客様のニーズに応えられる会社になっていくことが、私たち錢高組の目的であると考えています。そのためにも安定的に利益を稼ぐための投資は積極的に行っていくことを計画しています。
株主の皆様へ
当社の企業価値向上に対する考え方
株主様より当社の企業価値向上に対するご意見・ご質問を頂いております。当社としては企業価値をしっかり高めることで株主様のご期待に応えることが重要であると認識しております。当社における企業価値向上とは「良いお客様を持って良い社員とともに強い財務体力を作っていく」ことであると考えます。そのためには従業員への教育をはじめとした人材への投資により、人的資本の質の向上を図り、「持続可能な社会基盤の整備」にしっかりと貢献していくことで、ステークホルダーの皆様から今まで以上にご評価を頂けるよう一層事業に邁進してまいります。
お客様へ
品質に対するお約束とさらなるお客様ニーズの先取りのために
建設業は契約の時点では未だ形のない建設物の完成をお客様にお約束する商売です。それはひとえに、お客様が当社に寄せていただく無形の信用・信頼があってこそ成立するものであると思いを新たにしています。過去の成果に満足することなく、さらなるお客様満足のため、品質向上に向けた技術開発や施工における取り組みを続けています。本報告書ではそのひとつとして、大規模物流施設において重要なコンクリートのひび割れ防止対策の技術開発についてご紹介しています(→「品質向上に寄与する技術開発 低収縮コンクリートを用いたひび割れ対策の促進」)。
事業環境の急速な変化に伴い、お客様ニーズは多様化しています。当社は具現化していない潜在的なニーズも含めてお客様の課題に先回りし、その解決のために様々なご提案ができるよう、技術力・提案力の向上に取り組んでいます。2022年6月にはZEBプランナー認証を取得し、ZEB実現に向けた業務支援(建築設計、設備設計、設計施工、省エネ設計)を行っています(→「ZEBの実績拡大に向けた取り組み」)。
当社のお客様とのご縁は当社にとって無形の財産です。過去の先輩方が築き上げてきた信用・信頼を次世代に引き継ぎ、これからもお客様に錢高組の仕事にご満足いただき、さらに未来の仕事へのご満足もお約束できるよう精進してまいりますので、引き続きお引き立てを賜りますようお願い申し上げます。
地域の皆様・学生の皆様へ
建設業の魅力向上と地域の皆様の更なるご理解のために
建設業は、それ自体が社会貢献活動といえる側面を持っています。社会基盤の構築や防災、災害発生時の復旧活動・復興事業、地域の雇用の創出など建設業は社会の中で大きな役割を担っています。本報告書においても、2011年3月の東日本大震災からの復興事業である「摂待水門(摂待地区海岸災害復旧)」をご紹介しています(→「PROJECT REPORT3」)。
一方で建設業では新規就労者の減少と高齢化の進展により、担い手不足が大きな課題となっています。この課題解決のため、当社においても建設業の魅力向上に向けた取り組みを積極的に進めています。業務効率化による長時間労働の削減や4週8休の実現に向けた取り組みなどで、建設業の魅力向上を図ってまいります。
また地域の皆様や学生の皆様を対象に建設業に対する理解を深めていただくため、現場見学会等の教育活動を積極的に行っています(→「地域社会の一員として」)。お手に取っていただいた皆様にとって、本報告書が建設業に対する理解を深めていただくきっかけになれば幸いです。
協力会社の皆様へ
元請としての使命と共存共栄関係の構築
建設現場における安全確保は元請企業の重要な責任です。当社には錢高組の作業所で働く全ての方の命を守る責任を胸に「錢高組の作業所ならば、安全に関して心配はない」と言っていただけるような作業所の構築に努めています。安全に関する各種社内ルールの制定、作業所における安全設備の充実、役職員による定期・不定期の安全パトロールの実施等を通して、全ての作業所で安全な労働環境の構築に向けた不断の努力を続けています。
2022年度については、労働災害の発生頻度を表す度数率および災害の重篤度を表す強度率は前年度より低下しましたが、依然として労働災害被災者ゼロの目標達成には至っていません(→「安全で安心な職場づくりを目指して」)。当社は引き続き、労働災害の撲滅に向けた取り組みを継続してまいります。
労働環境の改善に関しては、働き方改革への取り組みも重要なテーマです。2024年4月の建設業における時間外労働上限規制の適用開始を見据え、当社は業務手順の見直し・アウトソーシングの推進等による生産性向上など業務効率化に向けた各種取組みを進めています。また建設業に従事する皆様の処遇改善に向け、建設キャリアアップシステム(CCUS)の普及にも引き続き取り組んでまいります。協力会社の皆様のさらなるご理解・ご協力をお願い申し上げます。
今後、ゼネコンにとっては優秀な協力会社の皆様といかに連携していくのかが、生き残りを左右するようになると認識しています。協力会社の皆様と元請は共存共栄の関係です。今後も引き続き協力会社の皆様のご協力を賜りたく存じます。
環境対応について
脱炭素目標の実現に向けて
社会的な要請がますます高まっている気候変動をはじめとする環境問題への対応として、当社では2030年度に施工段階におけるCO2排出量の40%削減、さらに2050年度にCO2排出実質ゼロの達成を目標に掲げ、脱炭素化の実現に向けた具体的な取り組みを進めています。本報告書においては「環境への配慮」の章で、「脱炭素」の目標達成に向けた進捗状況や工事で使用する電力への「CO2フリー電力」の導入など、環境問題に対する取り組み状況をご紹介しています。
最後に
「生成AI」の急速な技術進化が広く社会の注目を集めています。こうした技術革新の急速な進展は仕事の進め方や物事の判断の仕方を大きく変えていくことになるでしょう。
時代の変化の中で、過去を金科玉条にするのではなく、今までやってきたことがこれからも正しいのか、常に議論しながら自問自答することが重要であると考えます。
時代に合わせ正しいものに変えるべきものは変えていくことを常に心がけ、錢高組の新たな歴史をつくっていくため、事業に一層専念してまいります。今般取りまとめました『CSR報告書2023』をご高覧いただき、忌憚のないご意見を賜れば幸いです。