CSR
- 工事概要
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- 事業主
- NTT都市開発株式会社
- 施工場所
- 大阪市西区京町堀
- 設計・監理者
- 株式会社錢高組一級建築士事務所
株式会社アパアソシエイツ
- インテリア
デザイン - 株式会社NAO Taniyama&Associates
- 工期
- 2021年1月(新築工事:2021年5月)~2023年1月
- 工事概要
- S造 地上13階建
建築面積 976.42㎡ 延床面積10,586.36㎡
- 写真撮影
- フォワードストローク(①~⑥,⑨,⑮)
居心地のよい空間と上質な時間を提供する
日本初進出のプレミアムホテルブランド
古くから商人の街として栄えてきた大阪市中央部の「京町堀」に、プレミアムホテルブランド「voco」の日本初進出物件が誕生しました。
vocoはインターコンチネンタルホテルズ&リゾーツが2018年から展開するホテルブランドです。
vocoはラテン語で「招待する」「呼び集める」ことを意味し、自然体で過ごせるプレミアムな空間と「おもいがけない特別」な体験を提供し、世界各国で急速に成長している次世代型のホテルブランドです。本プロジェクトはvocoブランドとして日本初出店のホテルとなります。
古材や旧建物の部材を再利用し、歴史と記憶を継承
本建物の建設地は大阪中央部を縦断する四つ橋筋沿いで、大阪メトロ四つ橋線「肥後橋駅」や御堂筋線「淀屋橋駅」からも近く利便性の高い商業地区です。古くから商人が市場を開き庶民の町として栄え、大阪の発展に貢献してきた場所です。現在では個性豊かな店舗が集積しており、今もなお活気のある賑わいを感じさせます。
本建物ではロビー部分に戦前の民家等で実際に使われていた柱・梁を再利用した古材を採用しており、古くからの商人の街にふさわしい「蔵」のイメージを取り入れています。
また本建物のデザインには敷地に建っていた近代建築「京町ビル」のイメージを随所に取り入れています。京町ビルは1926(大正15)年に建設され、1948(昭和23)年から1960(昭和35)年まで当社が本社として使用し、その後は当社の関連会社等が使用していました。
本建物では京町ビルで実際に使用されていたレリーフや建具等を新建物の装飾として使用し、その記憶を継承しています。意匠にも京町ビルの持っていた様式建築としての安定感等をエッセンスとして新たな建物に取り入れています。旧建物の安定感のある石張りの基壇部やシンメトリー性の高い立面のイメージを継承し、シンプルで美しいファサードとしました。
限られた敷地をフル活用して安全な施工を実現
周辺にマンションやオフィスなどの建物が立ち並ぶ都市部に位置し、交通量の多い大通りに面した敷地いっぱいに建物が立つ計画となった本工事では、敷地をいかに活用して施工を行うかがカギとなりました。
本工事では建物全体を平面で「先工区」と「後工区」に分割し、後工区を先工区施工のための荷捌きヤードとして活用することで、道路上での作業を減らし第三者災害の防止に貢献しました。
タワークレーンは建物内部に設置する計画とし、土台部分を先に建設した建物の床に置き、工事の進捗とともに順次上層階に引き上げていく「フロアクライミング方式」を採用。上層階の建て方工事を進めながら下層階の内装工事を同時並行で進めることができ、タワークレーンの支柱跡を埋める工程も不要となり、工期短縮に貢献しました。またタワークレーン支柱の土台部分を折り畳み式にすることで、引き上げ・設置の効率を向上させるとともに高所作業を減らし、安全性の向上を実現しました。
ICTツールを活用し、スムーズな合意形成を実現
スプリンクラーや給排気設備の納まり検討には関係者間の合意形成ツールとして設備BIMツールを使用。天井内設備配管などを3Dモデル化することで干渉箇所などを分かりやすくチェックできるようにしました。また施工時にも3Dモデルを活用することで、どのような納まりになっているのか、担当者同士で具体的なイメージを共有しながら施工を進めることができました。
外資系ホテルの建設工事である本工事では、国内および海外の担当者との綿密な打ち合わせが不可欠でした。実際の仕上がりを確認するために客室と廊下部分のモックアップを制作し、Webカメラや3Dカメラを活用しながら、国内外の担当者と細部などをリアルタイムで確認し、スムーズな合意形成を可能にしました。
施工現場から
(仮称)
京町堀1丁目計画作業所
副所長井上 健太
新建物のインテリアとして再利用
コロナ禍で困難に直面も、
こだわりの詰まった
デザインを実現都市部の限られた敷地の中での本工事では、近隣の方々への配慮として工事車両等の前面道路使用を最小限にするために、敷地を先工区と後工区に分割し、後工区のスペースを車両搬入スペースとして工事を進めました。後工区の躯体工事施工時には、先工区の仕上工事の搬入車両を考慮した搬入計画が必要になったため、工程調整に苦労しました。周辺にはマンション、オフィスビル、飲食店などがあり、昼夜問わず人通りがある環境の中での作業となりました。やむを得ず道路を使用しての工事については、第三者災害防止のために関係者への事前連絡を徹底することで、スムーズな作業に繋げることができました。またホテルという建物用途上、多種多様な仕上工事がありましたが、施工管理にICTツールが威力を発揮しました。
本建物には「京町ビル」のレリーフのデザインを取り入れた金属製の天井材や、古民家再生木材等を活用した木フレーム、本建物のために特注で製作したカーペットなどが使われています。こだわりのつまった内外装には特注品や海外品物も多く、コロナ禍もあり納期管理には細心の注意を払いました。
本建物には多くのデザイナーが関わっていることもあり、関係者間の設計調整が難しく、デザインがなかなか決まらないという場面もありましたが、やはり最新のコミュニケーションツールが威力を発揮し、国内外の関係者間の早期の合意形成を図ることができました。コロナ禍の影響で海外からの渡航制限がかかり、関係者が来日できなくなった際も3Dカメラをはじめとした様々なITツールを利用し、詳細をリアルタイムで共有することができ、円滑な意思疎通に役立ちました。
施工中には学生の方を対象に1dayインターンシップ見学会を躯体・仕上工事施工段階で実施し、実際の作業内容についての説明とディスカッションを行い、建設業の魅力と現場の雰囲気を感じていただけるようにしました。
90年あまりの間、京町堀の街で人々に親しまれてきた京町ビルと同様、本建物も街の皆様に誇りに思っていただける建物になったと自負しています。京町ビルの記憶を引き継ぎながら、これからさらに長い歴史を重ねていってくれることを楽しみにしています。