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北陸新幹線 関川橋りょう工事
北陸新幹線 関川橋りょう工事が2006年3月の着工から2年9ヶ月の工事期間を経て、2008年12月に完成しました。この橋りょうは2014年度開業へ向けて建設中の北陸新幹線高崎起点から約173kmに位置し、1級河川関川を渡河するPC3径間連続箱桁橋です。
工事箇所は、現在放映中の大河ドラマ「天地人」の舞台でもある上杉謙信の居城「春日山城」から南へ約12kmに位置します。古き戦国時代、上杉謙信率いる上杉軍が武田信玄率いる武田軍と北信濃の覇権をめぐって戦った川中島へ向かうため、関川に沿って妙高山へ向け南下する街道脇(北国街道)でもあります。また、上杉家の家督をめぐって上杉景勝と「御館の乱」で争った上杉景虎の終焉の地となった鮫ヶ尾城跡も近隣に位置しています。
工事概要
橋りょう | 北陸新幹線 関川橋りょう |
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発注者 | 独立行政法人 鉄道建設・運輸整備支援機構 北陸新幹線建設局 |
設計者 | 日本交通技術株式会社 |
施工者 | 錢高・保坂特定建設工事共同企業体 |
工期 | 2006年3月20日〜2008年12月19日 |
工事延長 | 215m |
下部工 | 橋脚(壁式)杭基礎(場所打ち杭)3基 橋脚(小判型)ケーソン基礎 2基 |
上部工 | PC3径間連続箱桁ラーメン橋 185m 1連 2主RC単T桁 10m 1連、RC単純T形4主桁 20m 1連 |
豪雪地帯での橋つくり~北陸新幹線関川橋りょう工事
北陸新幹線関川橋りょう工事は、橋脚を築造する下部工工事と橋桁を築造する上部工工事です。
下部構造
関川は、上流部の勾配が急峻でダムがないため、河底には大きな転石が大量に堆積しています。試掘調査の結果では、深度4m付近に5.8m×3.5m×2.4m、推定重量100tもの巨大転石が確認されています。そのため、河川内の橋脚基礎2基は巨大な転石でも掘削可能なニューマチックケーソン工法を採用したピアケーソン方式で施工しました。
◆「ニューマチックケーソン」ってどんな工法?
ニューマチックケーソン工法(Pneumatic caisson method)のPneumaticは「空気による」という意味で、caissonは「函」を意味します。
ニューマチックケーソン工法は、コップを逆さまにして内部の空気が外に逃げないように水中に押込んだ状態で、水の浸入を空気の圧力によって防ぐ原理を応用したものです。
ケーソンの下部に気密作業室を設け、そこに圧縮空気を送り込むことで周辺部の地下水の浸入を防ぎ、地上と同じ状態で掘削できるようにするものです。
橋脚施工の場合は、気密作業室で掘削と空気圧減圧を繰り返すことでケーソン躯体を徐々に沈下させ、硬い支持地盤まで沈めたところでコンクリートを打設して橋脚の基礎とします。
この工法は、1841年にフランスで生まれ、イギリス、アメリカ、オランダ、ドイツ、ロシアで施工され、日本で採用されたのは1902年の横浜の岸壁建設工事と言われています。現在この技術を継承し、技術開発を進めているのは我が国だけです。
錢高組では1931年、我が国初の請負いによるニューマチックケーソン工法を採用した隅田川の吾妻橋改築工事を施工して以来、多くの工事を手がけています。近年では、橋梁の基礎工事のほか、洪水調整池の築造にも用いています。
◆ピアケーソン方式
当工事で採用したニューマチックケーソン工法は、ピア(橋脚)とケーソンを一体で沈設させるピアケーソン方式です。橋脚が沈下荷重となるため沈下が容易で、工期短縮ができる工法です。しかし、ケーソンを沈下させる前に事前に橋脚を築造してケーソンと一緒に沈めるため、沈下時は橋脚本体の傾き、正確な位置、高さの確保等ミリ単位の高い精度が必要です。ケーソン沈下時は、現場全体に緊張感が漂い、基準値内で無事設置作業を終了しました。
ニューマチックケーソンの原理
ニューマチックケーソンの施工手順
作業室内P3橋脚築島状況
P3橋脚築島状況
上部構造
◆片持ち張出し架設(やじろべえ工法)
「やじろべえ工法」ってどんな工法?
片持ち張出し架設(やじろべえ工法)は、橋脚上部にワーゲンと呼ばれる移動作業車を設置します。この移動作業車内で3~4mのブロック毎に、型枠組立、鉄筋組立、コンクリートを打設し、コンクリートが固まった後、PC鋼棒でコンクリート両端にプレストレスを与えて固定します。その後「やじろベえ」のようにバランスをとりながら、移動作業車を10日に1度左右に張出します。
関川橋りょうでは、この作業を片側10回繰り返しました。橋梁全体の通り抜けは、2008年8月に完了しました。
◆冬の寒さにも負けず~冬期のコンクリート打設~
冬の新潟・上越地方は最低気温が0℃、最高気温が5℃と寒い日が続きます。加えて日本海からの風雪が吹き抜けます。固まる前の生コンクリートは、寒さによりコンクリート内の水分の凍結や急激な乾燥によるひび割れを起こす、とても敏感な生き物です。そのため、生コンクリートの強度が出るまでは、一定の温度と湿度を保つことが大切です。
関川橋りょう工事では、コンクリートや人を降雪や強風から守るために、コンクリート・鉄筋・型枠作業を行う移動作業車全体をシートで覆い、我々はシートの中で作業しました。コンクリート打設後は移動作業車内に4台のジェットヒーター(大型の温風機)を配置し、シート内の気温を15℃~20℃に保持してコンクリート養生を行いました。
張出し架設
移動作業車組立状況
冬期施工
◆片持ち張出し架設(やじろべえ工法)完了
2007年9月後半の準備工から始まり、柱頭部築造~片持ち張出し架設も5月末の渇水期内に全ての河川内作業を完了させ、一つの大きな山場を越えました。
張出し施工中には、現場見学会を開催し約30名の近隣住民の方々に参加いただきました。繋がっていない橋が宙に浮いている状態や、橋面上の高い位置からの風景を興味深く見ていただき、3歳くらいのかわいらしい女の子が大きなヘルメットを手で押さえながら、周りを眺めている姿が特に印象に残っています。
◆側径間の施工と中央閉合部の施工
片持ち張出し架設(やじろべえ工法)完了後は、側径間(橋梁の両端部)と中央閉合部分の施工です。
最初に側径間(橋梁の両端部)を固定式支保工で施工し、“やじろべえ”の片方の手を橋脚に繋げました。その後、中央閉合部を吊り支保工で施工し、もう一方の手を繋げ、最後にPC鋼線で橋梁全体に緊張力を与え関川橋りょうが完成しました。
片持ち張出し架設完了
見学会
中央閉合部
中央閉合コンクリート打設完了
工事の記録
着工前
ニューマチックケーソン沈設
下部工完成
張出し状況1
張出し状況2
完成